どうせ引っ越すなら今度は買うことにしよう。そう思っていました。自営業ながらもう10年も続いているし、所得も一定のものがあるのでローンも通らなくはないだろうと。問題はマンションにするか一戸建てにするかです。
僕は買うなら一戸建てと考えていました。楽器を弾くのが趣味の一つになっている僕は、ある程度の音量で気兼ねなく楽器を弾ける環境が欲しかったことと、上の子がドタドタ家の中を走り回るたびに階下の人に気兼ねしなければいけないことに嫌気がさしていたことがあります。
女房も同じようなもので、早速一戸建て探しを始めることにしたのです。
とはいえ、僕の仕事も忙しいため、当面は昼間インターネットで物件を検索し、土日に内見するという流れをとることになりました。
当日はとても天気がよく、駅まで営業の人が車で迎えにきてくれましたが、車には女房と子供だけ乗せて僕は駅から現地まで歩きました。
現地に行ってから分かったのですが、この物件は向かいの土地に巨大な送電線が立っており、それ以外にはこれといって問題もなく価格も手ごろだったのですが、やはり高圧線が気になってしまいました。
その帰りに幕張で別の不動産屋の前を通りかかり、格安の新築物件があったので現地を見せてもらいました。が、ここは区画整理の予定に入っている土地に新築されているいわくつきの物件で、価格は安いのですが何年か後に家を動かしたり立て直したりする必要がでてきそうなのと、周囲が工事現場だらけになる時期が来ることが予想されたのでここもあまり興味を持てませんでした。
しかしここは軒の数メートル先を西武新宿線が通過していく超線路脇物件で、静かなところを希望する僕には到底納得できないものでした。
その後に別の分譲地にある新築物件を見せてもらいました。ここは駅から離れているものの建物の感じがとてもよく、外から見た感じも部屋の内装も一目で気に入りました。女房もずいぶん気に入っていたようです。
ただしここは畑のど真ん中で風の強い日に埃が入ってきそうなのと、駅から非常に遠い(25分以上)ということで見送りました。が、この物件で僕はダイケンの建具との運命的な出会いをすることになるのです・・・・続く
物件は小平霊園のすぐ近くで、駅からもそう遠くなく、静かなのはとても好印象でした。価格もほどほどでしたのでかなり考えたのですが、どうも建物の作りが甘い感じで、電気のスイッチのタッチが悪い(ちょっとガサガサする)とか建具の継ぎ目に隙間があるとか、何かをぶつけた跡があるとか、とにかく建物全体から建てた人の愛が感じられない物件で、場所はいいのに惜しいなぁ・・・という印象でした。この場所に先週最後に行った建物が建っていたら即決したかもしれません。
この日のおしまいにその不動産屋に案内されてローンの話などを聞いてきましたが、建物自体があまり気に入らなかったのと、この不動産屋のしつこさに少し辟易していたこともあり、結局この不動産屋とは縁を切ることにしました。
ここは駅から10分ちょっとあるものの江戸川の河川敷まで徒歩2分という立地で、海までも車なら10分ちょっとで行けそうなところでした。車も2台は止められ、建物自体も小平で出会ったダイケンの建具を使用しており結構気に入ってしまいました。
ここは本当に気に入っており、営業の人は「他のものも見て下さい」と言うのでいくつか物件を見せてもらったのですが、どれも高速道路脇か線路脇かで全く好きになれませんでした。
この田尻の物件は本当に気に入っていたので色々と調べて条件が合えば買ってしまうかもしれない、と自分でも感じて家に帰ったのでした。帰り際に営業マンに「田尻の物件の近くには東京外郭環状道路が通る予定」であることを聞かされたのはちょっと驚きでした。
しばし脱力したあと、しょうがないので江戸川の河川敷を散歩し、最寄駅である東西線の原木中山駅から家に帰りました。
この物件はおそらく先週内見したときには売れてしまっていたのだと思います。営業の人はそれを知っていたので別の物件に目が行くようにしていたのでしょう。まぁそれも売るテクニックの一つなのでしょうね。
散歩の途中で、コルトンプラザのすぐ近くに手ごろな新築物件があるのを見つけました。ちょっと惹かれたのですが、「コルトンプラザのすぐ近くに住むのと、江戸川河川敷のすぐ近くに住むのとでは、子供は全く違った育ち方をするのではないか。我々はどういう子供に育てたいと思っているのか」を女房を話し合った結果、コルトンプラザ近くの物件は見送られました。
その結果見せられたのが市川市大和田の物件で、お願いしたとおり河川敷まで徒歩30秒といったところでした。地図を見ても高速道路や鉄道のそばではなく、安心して見に行ったのですが、言ってみるとそこは地下鉄都営新宿線の真上でした。これには笑うしかありませんでしたが、数分おきに真下を通る電車を感じながら「ここに4000万近く出して住む人がいるから家を建てるんだろうなぁ」と思ったりしたのでした。
内心かなりへこんでいたのですが、気を取り直して二つ目の物件へ向かいました。
この物件にはまだ建物は建っておらず、更地で隣に建築中の物件がありました。
場所は市川市の国府台(こうのだい)というところで、江戸川まで徒歩2分ぐらい。最寄駅は(初乗り200円、二駅300円という値段で)悪名高い北総線の矢切駅です。
国府台は「都内からわずか数十分のところにこんなに緑の深いところがあったのか・・・」と思ってしまうようなところです。現地は緑地のど真ん中で、東西を雑木林に挟まれていました。
「ここはすごいかもしれない・・・」素直にそう感じました。スーパーまで徒歩10分。国府台病院まで12分ぐらい。便利とは言わないまでも不便なほどではないところで、環境は抜群。でも価格はちょっと予算オーバー。
立地に関しては猛烈に気に入ってしまったので、この日不動産屋さんには近所で放置してもらって、女房と二人で江戸川河川敷をゆっくりお散歩しながら京成線国府台駅まで歩いて帰りました(約30分)。
とはいえ申し込みしてしまうと後はエスカレータのように勝手に進んでいってしまうのは目に見えているのでとりあえず冷静さを取り戻すために一晩寝かせました。
不審だったので、このことに関して問い合わせのFAXをしてみたところ、「あくまであの土地は建売という形ですすめているものを、建築申請の直前で止めているだけですので、建売と同じ条件で売買をさせてもらいたい」とのこと。
インターネットで調べてみるとこの契約は典型的な「売り立て」「青田売り」という違法な契約らしく、悪意を前提にして考えると建築請負だけやってしまって後は適当に家を建てられてしまっても文句が言えなくなってしまうから要注意、とのこと。
で、不動産屋に電話して「これって違法なんじゃないですか?」と思い切って言ってみたところ、「まぁ、そう言われてしまうとそうなんですが・・・」という返事。僕は国府台の立地が気に入っていたので「土地と建物の契約を別にしてもらえませんか」とお願いすると「売主と相談してみます」というお返事でした。
数時間後、「土地と建物は別契約でいけますんで」という連絡とともに土地だけの見積りがFAXで送られてきました。無事仲介手数料も土地だけの価格になり、これだけでも50万円近い節約になりました。何でも言ってみるもんです。ただ、売主からすると「こんな面倒な客はちょっと嫌」だと思うので、同じ土地に「売り建て」で契約してしまう人が現れたら負けてしまうでしょう。
しかし長い一日でした・・・・
僕の実家の反応は「川っ端は怖いよー水が来るよー」というところです。無理もありません、僕の実家付近は先だっての台風で水に浸かり死者まで出していたのです。
難色を示しながらも、環境がとてもいいことを伝えると僕の田舎は納得してくれました。女房の方もなんとかOKが出たようでした。
仕事にだいぶ余裕が出てきたこともあり、Googleで「国府台 浸水」とか「国府台 洪水」とか「国府台 地盤」とか、そういう言葉を検索して片っ端から読みふけっていました。国土地理院の航空写真も見てみました。どうやら現場は昭和40年代後半に造成されたところのようです。古いところを調べると、ここは昔国府台城(里見城)の堀にあたるところだったようで、その後おそらく明治以降に埋め立てられているようです。
浸水被害に関しては、少なくとも戦後のキティ台風やキャサリン台風以来被害の記録はなさそうでした。
地盤に関して少し不安もあったので、土地の成績書とも言える地盤調査書を不動産屋にお願いして送ってもらうことにしました。
家に帰ると十枚近いFAXが届いていました。見るとあまり地盤はよくないそうで、市川のほぼ全域がこんな感じなので杭基礎工事も建物の価格に入っています、とのことでした。
でもあらためて現地の環境の良さを再確認しました。不動産屋もいないので、周囲をゆっくり歩いて回りました。
江戸川まで数分。雑木林まで30秒。幹線道路から外れており静かで、部外者もほとんど入ってこないようなところです。知らない人がウロウロしていると非常に目立ちます。
雑木林がすぐ近くにまで迫っているので、数日前に振った激しい雨が林からコンクリートの上を側溝の下水まで流れていました。これはどう判断するべきなのでしょうか?周囲は小高い丘に囲まれており、降った雨は家の周辺に集中しそうです。好意的に解釈すれば、雑木林の保水力のおかげで降った雨が一度に流れ込まず、数日をかけてゆっくり流れることで浸水が避けられているようにも思えます。
周囲の丘は崩れてくるような急角度の傾斜ではありませんし、巨木がぎっしり生えていますので土砂が崩れてくることはなさそうに思えました。午後から仕事に出ましたが、だんだん検索語にもネタが尽きてきて「国府台 犯罪」「国府台 事件」「国府台 殺人」「国府台 霊」「国府台 自殺」「国府台 死者」といった縁起でもない言葉ばっかり検索して読んでいました。このあたり一帯は古戦場ということもあり、歴史的には坪当たり数人の死者がいても全く不思議のないところです。ただ、女房は「お化けだけは困る」と言っているので、見える範囲に惨殺事件などがなさそうなことだけは確認しました。
でも、出るときは出るんでしょうけど...